カラオケにて、「自分の声域では歌えないから」と好きな曲を選べずにいませんか?
「好きな曲のサビが高くて歌えない」「高音になるといつも声が裏返ってしまう」などといった声域に関する悩みは、誰しもが一度は通る道だと言えるでしょう。
しかし、実はこれらの悩みは全てボイトレによって改善することができるのです。
本稿では、自信を持ってキーの高い歌を歌えるようになるための練習方法をいくつか紹介します。
かく言う私も、ボイトレを始める前は高い声を上手く出せずに悩んでいました。
私自身が実際に効果を体感した練習方法を紹介することで、同じような悩みを抱えている方の背中を押すことができればと思います。
1.なぜ高い声が出せないのか
高い声を出そうとすると声が掠れたり裏返ったりして、綺麗に響かせたい高音がどこか苦しそうに聴こえてしまうこと、よくありますよね。
「なぜ気持ちよく歌いきれないのだろう」と悶々としてしまう気持ち、とてもよく分かります。
では、なぜ高い声を出すことができないのか。
ずばり「体に力が入りすぎているから」なのです。
例えば、サビで一気に音が高くなる曲を歌っている際に、サビに近付くにつれ身構えるような緊張感を覚えたことはありませんか?
高い音に対する苦手意識が強いと、ついつい全身を強張らせることで声を張り上げようとしてしまいますが、実は高音は体の力を抜いた方が出しやすいのです。
必要以上に体に力を入れてしまうと、喉が締まることで声量が落ち、絞り出したかのようなか細い高音になってしまいます。
また、地声によって勢いのままに高音を歌い上げようとすると、音が外れたり、声が伸びなかったりするばかりか、大切な喉まで痛めてしまうのです。
そのため、高い声を出したい際には、まず適度に脱力することが大切です。
2.高い声を出すための練習方法
高い声を出すためにはリラックスすべきであるということを踏まえた上で、実際にどのような練習方法に取り組むべきかを考えます。
本章では、私が今まで行ってきた練習方法で、特に効果を感じたものを紹介します。
①腹式呼吸を意識した発声
高音を歌っている際に声が掠れる原因として、「過度な力み」だけでなく、「喉で歌ってしまっている」という点も考えられます。
高い音をより長く深く響かせるためには、喉だけでなく、腹部による支えが不可欠です。
そこで重要視されるのが、「腹式呼吸」です。
腹式呼吸とは「具体的には横隔膜と呼ばれる筋肉の膜を上下に動かす」呼吸ですが、より簡潔に言うと、「息を吸うとお腹が膨らみ、吐くと凹む」呼吸のことを指します。
読書中や寝る前など、心身共にリラックスしている際に無意識に行われる腹式呼吸ですが、この呼吸法を意識して行うことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 喉が締まらないので、無理なく高音を出すことができる。
- 喉に力が入らないので、喉を痛める心配が無い。
- 吐く息をコントロールしやすいので、声を長く伸ばすことができる。
- 胸式呼吸よりも重心が下がり、声量のバランスが安定する。
やはり、「喉に力が入らない」という点が腹式呼吸の一番の魅力であると言えるでしょう。
高い声を出すためには、「力まずに脱力する」ことと、「重心を低くすることで体全体で歌う感覚を持つこと」が大切です。
そして、これらを同時に意識するためには、腹式呼吸の実践が最適であることが分かります。
②鼻腔共鳴を用いた発声
次に、声域を広げる発声法を紹介します。「鼻腔共鳴(びくうきょうめい)」とは、「鼻の奥の空間(=鼻腔)に声を響かせる」発声法です。
例えば、口を閉じたまま発声する「鼻歌(またはハミング)」の最中に鼻筋に触れてみると、ビリビリと震えているのを感じることができます。
これはまさしく鼻腔に歌声が響いている証拠であり、鼻腔共鳴による発声が行われていることが分かります。
鼻歌やハミングによって「鼻腔共鳴」の感覚を掴んだら、「鼻腔共鳴」による発声練習に挑戦してみましょう。
唇を閉じたまま「んー」と鼻に声を響かせている状態から、「イ」「エ」「ア」と徐々に口を開いていき、鼻腔に響く振動をできるだけ保ったまま発声してみると良いでしょう。
その際、喉を締め、あまり吐息を漏らさないように意識することが重要です。
個人的な感覚としては、鼻筋の他にも喉奥が振動によって痒く感じることが多かったように思います。
この「鼻腔共鳴」を用いた音階練習は、高音の強い発声に不可欠な「ミックスボイス」の会得に繋がるという大きな魅力を持っています。
「ミックスボイス」とはその名の通り地声と裏声が混ざった歌声のことで、高音を力強く歌い上げるために必要となる技術です。
この「ミックスボイス」を自在に操るアーティストとして、世界的な人気を誇るロックバンドONE OK ROCKのボーカル Takaや、凛とした歌声や切なく響くファルセットが特徴的な歌手 中島美嘉などが挙げられます。
ONE OK ROCK / The Beginning
高音が続くサビ(最高音:hiC)が際立つナンバー。シリアスな曲調でありながらもしっとりしたメロディラインが随所にあるので、ミックスボイスの発声を練習する曲として最適。
中島美嘉 / 雪の華
息と声が混ざり合った高音(ミックスボイス)から透き通るファルセット(ヘッドボイス)への移ろいが美しいサビは、ミックスボイスとファルセットの違いを感覚的に掴むための練習箇所として効果的。
鼻腔共鳴の感覚を掴み、喉を閉じた状態で裏声を鼻奥に響かせるという発声を行うことが出来るようになると、その声域は目を見張るような広がり方を見せます。ボカロやアニソンをはじめとする高い音域の曲を力強く歌い上げたいという方に、是非実践していただきたい練習方法です。
③リップロールによる発声
上記では声域を広げる発声法として鼻腔共鳴を紹介しましたが、続いて紹介する「リップロール」は、脱力したまま吐息の量をコントロールし、高音の発声を安定させるために必要な練習方法となります。
幼い頃に多くの人がやったであろう、「プルルル…」と息を吐きながら唇を震わせる「アレ」。
その「アレ」こそが「リップロール」と呼ばれる発声法なのです。
一見、どのような効果があるのか想像もつかないような練習方法ですが、プロのアーティストでもウォーミングアップなどに取り入れるような、極めて専門的な発声法です。
LiSA / 紅蓮華 (THE FIRST TAKE ver.)
アニメ『鬼滅の刃』の主題歌として爆発的な人気を博す「紅蓮華」の「THE FIRST TAKE」バージョン。
どこか緊張した面持ちを見せるLiSAは、本番前の強張った体を解すためにリップロールを行なっている。
緊張した表情筋や口元、唇などを柔らげるだけでなく、吐息の量をコントロールすることで声量のムラを抑える効果を持つ「リップロール」ですが、先に述べた「腹式呼吸」と合わせて練習することで、声を長く安定して伸ばすことが出来るようになります。
腹式呼吸による吐息に音を乗せるようにして「リップロール」を行い、慣れてきたらその状態をより長く持続できるように練習してみましょう。
また、高音での発声を安定させるために、「リップロール」による高音域での音階練習を行ってみると良いでしょう。
まとめ
高い声を出すための練習方法として、「腹式呼吸を意識した発声」「鼻腔共鳴を用いた発声」「リップロールによる発声」の3つを紹介しました。
ボイトレの教室や先生によって教え方はそれぞれですが、上記で紹介した三つは「高い声で伸び伸びと歌うために重要な基礎練習」として必ず教わるものだと思います。
何より、生徒としてボイトレの教室に通っている私自身が最も効果を感じた練習方法を選んでいるので、高音が伸び悩んでいる方や声域を広げたいと感じている方にとって、非常に適した練習方法となっているのではないかと思います。
カラオケにて、「高い声を出すのが苦手だから」と好きな曲を選曲できずにいる方は、そのまま諦めてしまうのではなく、是非これらの練習方法を試してみてはいかがでしょうか。