「継続は力なり」という言葉がありますが、ボイトレも例に漏れず「毎日行わなければあまり効果のないもの」だと言えるでしょう。
とは言っても、大声を出すことができない環境に身を置いている方や、練習が面倒でついつい忘れてしまう方も多いかと思います。
そこで、本稿ではプロの指導を参考に発案した「気軽に毎日続けられるボイトレメニュー」を皆さんにご紹介します。
この練習メニューは、極めて怠惰な私でも毎日継続できるようなシンプルなものとなっています。
この練習メニューを通して、「日々の継続がどのような効果がもたらすか」ということを皆さんにも是非実感していただければと思います。
1.簡単なボイトレメニューを組むにあたって
毎日コツコツとやっていれば終わるはずの夏休みの宿題を、最終日になって焦ってやり出すような学生時代を過ごしていた私は、今回足を踏み入れたこの「ボイトレ」においても昔からの「三日坊主癖」が抜けず悩んでいました。
これを正直にボイトレ教室の先生に相談したところ、意表をつかれるような答えが返ってきました。
「ボイトレの練習方法って、本当に簡単なものでいいんだよ」
何より声をあげて歌うだけがボイトレではない、と先生は付け加えていました。
つまり大声を出せない環境にいる人や、面倒だからと継続を怠ってしまいがちな人であっても、ボイトレを続けることは可能だと言うのです。
この一言に背中を押された私は、早速先生のご指導の下、自分だけの毎日メニューの作成に取り掛かりました。
そのため、今回紹介するボイトレメニューにおいて最も重要視されているのは、「生活の合間に気兼ねなくできる」という点です。
家事の最中に無意識に漏れる鼻歌※のように生活の中に溶け込む気楽さと、プロお墨付きの効果を兼ね備えたボイトレメニューを、次章で紹介します。
※実は、鼻歌もボイトレメニューとして大変おすすめです!鼻歌やハミングは「鼻腔共鳴」という歌唱方法の基礎練習としてよく用いられます。
「鼻腔共鳴」を使いこなせるようになると、声域の拡大や高音域の声量アップなどに繋がります。
手軽に出来る練習としてこちらもおすすめですので、気になった方は是非実践してみてくださいね♪
※「鼻腔共鳴」や声域の拡大に関して詳しく知りたい方はこちら!
▶︎▶︎▶︎【ボイトレ】高音を伸び伸びと歌えるようになるための練習方法
https://submora-mikata.com/2021/04/26/boitore%E2%88%92koon/
2.気軽に毎日続けられるボイトレメニュー
かくいう私も大声を出すと苦情が来てしまうような環境に身を置いているので、声を上げて歌う練習はあまりできずにいます。
さらにはコロナ禍の影響で気軽にカラオケを利用することも難しくなってしまったため、発声によるボイトレができずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回紹介するボイトレメニューは、発声の根幹を成す「呼吸法」にフォーカスを当てることで、大声を出さずとも「力強い発声」の基礎を作ることができるような内容となっています。
また、呼吸法は極めてシンプルな練習方法なので、意識さえすれば生活の端端で実践することができます。
「日常の一コマ」としてのボイトレを実践し、継続による成長を目指しましょう!
①腹式呼吸によるブレス練習
歌唱の根幹とも呼べる「腹式呼吸」とは「具体的には横隔膜と呼ばれる筋肉の膜を上下に動かす」呼吸ですが、より簡潔に言うと「息を吸うとお腹が膨らみ、吐くと凹む」呼吸のことを指します。
腹式呼吸には以下のようなメリットがあります。
- 喉が締まらないので、無理なく高音を出すことができる。
- 喉に力が入らないので、喉を痛める心配が無い。
- 吐く息をコントロールしやすいので、声を長く伸ばすことができる。
- 胸式呼吸よりも重心が下がり、声量のバランスが安定する。
声の伸びや声域の広さなどに大きく関わる腹式呼吸ですが、実は私たちは日頃から腹式呼吸を実践していると言えます。
例えば、就寝前にベッドで横になっている時、私たちのお腹は息を吸うと膨らみ、吐くと凹んでいます。
つまり、「体がリラックスしている時の呼吸」こそが腹式呼吸なのです。
この感覚を掴んだ上で実践すべき練習方法を以下に紹介します。
●「スッ」と一瞬で息を吸い、できるだけ長い時間をかけて吐き出す。
→ロングトーンの練習
●ゆっくり息を吸い、鳩尾に力を入れて「ハッ」と吐き出す。
→力強い発声の練習
特に後者は、練習曲などを聴きながら「自分が力を込めて歌いたい箇所」に合わせて行うのがオススメです。
鳩尾に力を入れたブレスは「喉に頼った苦しい発声」の防止や、力強くスピード感のある発声に繋がります。
無意識のうちに日常的に行われている腹式呼吸だからこそ、意識さえ出来ればいくらでも練習することができるのです。
②「タ」で歌うリズム練習
歌唱において発声と同様に重要視されるのが「リズム感」です。
リズム感の有無は歌唱全体の完成度を大きく左右します。
歌唱の根幹とも言えるリズムをしっかりと意識することが出来れば、そのクオリティは格段に跳ね上がると言えるでしょう。
では、どのようにして日頃からリズム感を養えば良いのでしょうか。
オススメの練習方法を以下に紹介します。
●とにかくたくさんの種類の音楽を聴く。頭や体を揺らしながら聴くと尚良い。
→様々な種類のリズムに触れる練習
●自分が苦手なリズムの曲を、歌詞を全て「タ」に置き換えて歌ってみる。
→リズム感を養う練習
多くのボイストレーナーが口を揃えて「曲を聴くこともボイトレの一環だ」と言うように、日頃から音楽に触れることで得られる学びは非常に多いです。
未知のジャンルを開拓したり、好きな音楽を繰り返し聴いたりとその方法は様々ですが、曲を聴きながらそのリズムに合わせて頭や体を揺らすことで、曲の世界観や表現を楽しむことができると尚良いでしょう。
リズム感を養いながら音楽表現のレパートリーを増やすこともできるという点において、「曲を聴くこと」は非常に効果的なボイトレであると言えます。
また、歌詞を全て「タ」に置き換えて歌う歌唱法は、リズム感を鍛える上で非常にオススメの練習方法です。
普段、歌詞や音程に気を取られて疎かになってしまいがちなリズムにのみ焦点を当てることで、ダイレクトにリズム感を養うことができる練習法となっています。
実践の際は、自分が苦手に感じるリズムの曲(アップテンポの曲や、ワルツ曲など)に合わせて歌うのがオススメです。
特にアップテンポの曲を練習する時には、無理に全て「タ」で歌おうとせず、巻舌に近い「ラ」を混ぜつつ歌うことでリズムに乗り遅れないようにしましょう。
「ラ」を混ぜて歌うことで、リズムに合わせながら力を入れるべき箇所や、脱力すべき箇所などが見えてくると思います。
③エッジボイスによる声門閉鎖の練習
映画「呪怨」のホラーシーンなどでよく使われている「あ”あ”あ”」というしゃがれた声をご存知でしょうか。
あれは間違いなく「エッジボイス」と呼ばれる発声法によるものだと考えられます。
どこかおぞましく、聞こえの良くない音のように思えますが、ボイトレにおけるエッジボイスの効果として、以下のようなものが挙げられます。
- 声帯をリラックスさせることができる。
- 声帯を閉じる(=声門閉鎖)感覚を掴むことができる。
- 声帯を閉じる必要があるため、無駄な息もれを防ぐことができる。
「声門閉鎖」とは、文字通り声門を閉じることを意味しますが、具体的には喉奥にある2枚のひだがピッタリと閉じた状態のことを指します。
その2枚のひだを適度な力加減で振動させることで、「喉を閉じたまま歌う」ことができるようになります。この状態で発される歌声こそが「ミックスボイス」なのです。
つまり、エッジボイスによって声門閉鎖の感覚を掴み、地声から裏声の切り替えをスムーズに行えるようになると、多くの歌手が自由自在に操る「ミックスボイス」の会得に一歩近付くことができるのです。
声域を広げたい方や、高音域を無理なく歌いたい方にはぜひ実践していただきたい練習方法です。
「ミックスボイス」や高い音の出し方に関して詳しく知りたい方はこちら!
▶︎▶︎▶︎【ボイトレ】高音を伸び伸びと歌えるようになるための練習方法
https://submora-mikata.com/2021/04/26/boitore%E2%88%92koon/
3.まとめ
日頃から簡単に実践することができるボイトレメニューとして、「腹式呼吸によるブレス練習」「『タ』で歌うリズム練習」「エッジボイスによる声門閉鎖の練習」の3つを紹介しました。
今のご時世では、カラオケやボイトレ教室などで声を出して練習することも憚られると思います。
しかし、こんなご時世だからこそ「すぐそばにボイトレがある生活」を意識することで、より「日常的に」歌唱力を鍛えることが可能となるのではないでしょうか。
「家から出られないから」「大きな声を出せないから」と諦めてしまうのではなく、このような状況下でも実践することができる練習方法によって、歌唱力を格段にアップさせることができる「チャンス」だと捉えてみるのはいかがでしょうか。